落ちつくんだ…『素数』を数えて落ちつくんだ…『素数』は1と自分の数、でしか割ることのできない孤独な数字…わたしに勇気を与えてくれる
「ジョジョの奇妙な冒険 第6部ストーンオーシャン」に登場するいわゆるボスキャラ、エンリコ・プッチが窮地に陥った時に「素数」を数えるというシーンが何度かある。(厳密には数えるという表現はちょっと違うが)
彼自身の言葉によると、落ち着くための彼のクセらしい(ちなみにぼくは曜日を数えるクセがある。7つしかないのですぐ終わってしまうんだけどね)
素数は2から始まり3、5、7、11、13、17・・・と果てしなく続くらしい。
今日は
なぜプッチ神父が素数を数えるのか?
を考えてみたい。
その前に肝心の素数とは何かを復習しておこうじゃあないか!
素数とは
素数(Prime Number)とは
正の約数が 1 と自分自身のみである自然数で、1 でない数のことである。 正の約数の個数が 2 である自然数と言い換えることもできる。 1 は(現在では)素数には含めない。
もう少し簡単に言うと、1とその数しか割り切ることのできない整数と思っていいだろう。
例えば素数である「5」は1と5以外の2、3、4で割ろうとすると割り切れない。
そういう数のことで、プッチはこれを「孤独な数字」と表現しているのが面白い。
素数でない6や8なんかは2つ以上の素数の組み合わせで作られるので、素数を合成した数字、合成数と呼ばれている。
神出鬼没の素数
これは100までの素数だが、ご覧の通りまるで規則性がない
せいぜい、「最初の2以外は奇数だね」くらいだろう。
5、7のように1つ飛ばしのところもあれば、23から29のようにかなり飛んでいるところもある。
90代などは97だけだ。
100から先も無限に素数は出現し続けるんだけど、ルール無用で突如出現するという気まぐれっぷりだ。
数が大きくなればなるほど出現頻度は少なくなっていくようだが、決して尽きることはない。
とはいえ巨大な数の素数を見つけることはとても大変な作業で、現在も計算は続いている。
2013年になんと1700万桁の数で素数が見つかった(もちろんここには書けない)
それが現在最大の素数で、指数で表すと、2の1,398,269乗-1という「ふーん」と言うしかない数だそうだ。
コンピューターで計算する以前は39桁の素数というのが人が手で計算して発見した最大の素数だった。2の127乗-1というのがその数だ。
素数は続くよどこまでも
素数が無限に存在し続けることはわかっている。
「え?そんなことどうしてわかるの?どこかの時点でまったく出てこなくなるかもしれないじゃない。素数は気まぐれなんでしょ?」
と疑う人は古代ギリシャの数学者、エウクレイデスに尋ねてみるとよい。
実にシンプルに教えてくれる。
もし素数が2、3、5の3つしかないという素数有限説を仮定してみよう。
すると残りの数はすべてこの3つの素数をかけてできる合成数ということじゃ。
つまり、2か3か5のどれかでぜーったいに割り切れないといけないんじゃあ!
ではこの有限であるはずの素数をすべて掛け合わせた数に1を足してみよう。
2×3×5+1=31
ほれ、見事31は素数じゃろう。2でも3でも5でも割り切れぬ。
この有限の素数を2、3、5、7と増やしても結果は同じ。211も素数じゃいぃぃぃ!!
つまりじゃ、
素数が有限であると仮定した瞬間、他の素数が生まれるという矛盾が生じる
・・・ことが素数が無限にあるという証明にほかならないのじゃ!
1が素数でない理由
そろそろ「素数」という字が「素敵」という字に見え始めてきたんじゃないだろうか?(笑)
素数の定義の中で、「1以外の」という但し書きがある。
これはなぜだろう?
1は1でしか割れねーし、てか自分も1だし、こいつ超マジスーパー素数じゃね??
しかし1は以下の理由で素数から除外されてしまった。
合成数を作る素数のかけ合わせは一通りしかないよーん
という不動のルールがすでに大昔に証明されっちまっていたのだ。
1を素数になんぞしてしまうと、このルールが滅茶苦茶にされてしまう。
つまり、合成数である8を作る素数のかけ合わせは
2×2×2
の1通りしか許されないのだぁ!
1を仲間にしちゃうと、1×2×2×2とか2×2×2×1×1とかなんぼでも作れちゃうので
えー、ちょっと言いにくいんだけど・・・1さんは・・・
というちょっと納得のいかない理由でハミってしまったのだ。
個人的には入れてやってもいいと思うんだけどね。
なんだかんだ群れて合成数なんぞ作って喜んでる素数たちよりも、1は最も「孤独な」数字なのかもしれない。
素数を生み出す式
全ての素数を生み出す公式は存在するのだろうか?
これはオイラーの二次式といわれるもので
xに1を代入すると、41
2を代入すると43
3なら47・・・4なら53・・・おお、これは!
素数を生み出す神の公式!
と、思いきやxが41に達したとたん、突如あざ笑うかのように1681という合成数をはじき出してしまった・・・
結論から言うと文字と整数だけであらわされる式では全ての素数を生みだすことはできないことが証明されている。
いやー惜しかったね、オイラー君
天国への階段
さて、なぜプッチは素数を数えたのだろう・・・?
プッチは神に仕える神父である。
そしてプッチは天国を求めた。
親友であり悪魔であるDIOがその方法を呈示した。
プッチの求めた天国はDIOの想う天国とは違っていたかもしれないが、プッチにとってはすべての未来が事前にわかっていて、それを覚悟することによって真の幸福が得られる世界だと狂信していた。
素数の出現場所は人智を超越し、正確には予測不可能である。
素数の発見から2500年以上がたった今でも、ぼくたち人間には捉えきれていない。
人智を超えた「神の意志」が働いているとしか思えない存在が素数なのだ。
その神の意志である素数を数えることは彼にとって、神の決定した運命をすべて正確にとらえ、覚悟しようとすることと等しい行為だったんだと、ぼくには思えてならない。
ひょっとすると、大きな素数を求め続けたその果てで、宇宙は一巡してしまうのかもしれない。
なんて・・・
2016.6.11 追記
知り合いに京都大学製「素数ものさし」なるものをいただきました!
2cmや7cmなど素数の長さはそのまま測れますが、4cmや6cmなどは7cm−3cmや11cm−5cmなどのようにして測ります。
25mmは一発では測れず、ゴールドバッハ予想にお任せだそうです(笑)
京都大学の生協のみで販売しているようですが、一般の人も購入可能で、Amazonでも売ってます!
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